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『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』上映後トークショー/広島国際映画祭2019≪おぼろがきレポート≫


リボンを解くように丁寧な言葉(岩井七世さん)

 すずの好きな台詞を聞かれた岩井さんは「監督が、リボンを解くように丁寧な言葉をたくさん投げかけてくださって、取りこぼさないようにたくさんメモしました」「(好きなシーンは)やっぱり桜の上で二人で話すシーンです。桜の木の上だけは二人だけの世界なので(中略)このときのやりとりはすごく好きです」

 対してのんさんは、リンの好きな台詞について「別れ際に〝この世界に居場所はそうそうのうなりゃせんのよ〟と声をかけるシーンがすごく好きです。すずが自分の居場所が無いことに焦っていることについて、直接的な会話はなされていませんが、リンはそれをちゃんと受け取っていて、核心のところで慰めてくれるリンの台詞にグッときました」と答えました。

 最後に〝この世界に居場所は~〟のシーンを実演するというサプライズがありました。優しくも研ぎ澄まされた二人のお芝居に、盛大な拍手が沸き上がりました。
 


『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』は2019年12月20日(金)公開予定!
 

♥筆者の感想

 素朴な可愛らしさが印象的だった前作の すずが、今作では〝大人の女性〟の部分がより深く描かれています。
 愛する人のことで一喜一憂するすずの姿は、現代の女性と変わらず 。だからこそ、そこに戦争という影が落ちることがとても悲しくて。
 リンとすずの、女性同士だからこそ、言葉にしなくても通じ合っている感じも、見ていて、心にジワッと紅が広がるような気持ちになりました。

 周作が、すずとの生活がとても楽しく、離れたくない気持ちをぶつけるシーンは、周作のすずへの ど直球な愛情が、ドスッ!と音を立てるように伝わってきて「周作ぅっ!ありがとう!よく言った!」と心を掴まれました。

 ただ、やはり すずたちが生きているのは戦時中で、落ちていく焼夷弾や、爆発で飛び散って跳ねる破片など、今自分がそこにいるのではないかと思うほど細かく描かれているため、爆発音がするたびに体がビクッと震え、頭が真っ白になりました。

 戦争の描写の中では、広島に原子爆弾が投下されて、壊滅した町の中を最後まで我が子の身を案じて手を引いていた母親と、その母親が息絶え、置いていかなければならなかった幼い女の子の場面は、『この世界~』の中で最も残酷な現実が描かれた部分だと思います。
 国の勝ち負けではなく、〝それでも生きている限り、その現実の中で生きていくことを強いる〟ことが戦争をした結果なら、戦争というものが傷しか残さない、いかに無意味なものだったのかを突き付けられる場面でもあります。

 2020年で日本は戦後75年を迎えます。〝戦争はだめ〟だけではなく、戦争をすることでどうなるのか、世代を問わず〝だめの先〟をじっくりと考える機会になる作品だと感じました。